この日は友人の墓参り。
東北本線に乗り…、
花巻着。
途中、花屋によって墓前に供えるちょとした花を買い、寺に向かう。
寺についたら、墓前の古い花を新しい花に取り換え、手を合わせる。
亡くなってもう10年ほど経つと思っていたが、墓石の横に彫ってある没年を確認したらまだ8年前だった。
月日が経つのは早いと言うし、実際に、早いと感じている。
しかし、時折、記憶よりも実際の時間の方がゆっくり進んでいるのを経験すると、頭の中が緩く混乱するのを感じる。
墓参りを終えたら、こちらにやってきた。
マルカンビル(旧マルカンデパート)である。
私が言うことではないのかもしれないが、花巻市は、都市計画を完全に失敗したので、花巻駅の東口は年を追うごとにどんどんすたれている。
ところどころにちらほらと頑張っている個人商店もあるが、ほとんどの店はつぶれていて、町全体がシャッター街のような状態になっている。
そんな中にあって、圧倒的な集客力と人気を誇り、今や花巻市最大の観光地となっているのが、このマルカンビル大食堂である。
マルカンデパートの閉店に伴って、この大食堂も一旦は閉鎖されたのだが、復活を求める花巻市民の熱い声にこたえて大復活を果たした。
復活後は、市民と観光客が同時に押し寄せ、連日大盛況のようである。
自分も、花巻市内の高校に通っていたので、花巻市の中心部に住んでいる人ほどではないが、マルカンデパートにはそれなりになじみがある。
毎度のことなのだが、エレベーターで6Fの大食堂まで上がると、外の静まり返った町の様子とは打って変わって、大量の人がひしめく様子にちょっと面食らってしまう。
この寂れた町のどこにこれだけの人がいたのかと、脳が一瞬バグるような感覚を経験できる。
食品サンプルが並んだウインドウを見ながらメニューを選ぶ。
14:00ごろに入店したのだが、さすがは超人気施設とあって、売り切れのメニューも結構出ていた。
本当は、『夜来香』の餃子定食が食べたかったのだが、売り切れていたので、マルカン食堂では定番どころの「ナポリカツ」と「ソフトクリーム」を食べることにした。
会計を済ませ、食券を受け取ったら、席を確保する。
よほどすいているときは定かではないが、基本的に、この大食堂では、お店の人が注文を取りに来てくれたり、食券を回収してくれるようなことはない。
席に座ったら、そこら辺を歩いているホール担当の店員さんのところに直接食券を持って行って、席番号を伝えて食券の半券をもぎってもらう。
あとは、席に座って待っていると、料理が運ばれてくる。
ちなみに、水もすべてセルフである。
人気店ゆえ、次から次にお客さんが入ってくるので、一度席を確保したら、水を取りに行くときも、その席に荷物などを置いて場所をキープしておかないと、他のお客さんが席に座ってしまう。
強い意志を持って「ここにいます」ということを主張する必要があるのだ。
なんとなく、殺伐としたものを感じるかもしれないが、このホスピタリティのかけらもない雰囲気こそがマルカン大食堂最大の魅力なのだ。
お客さんの側も、店員さんの側も、互いにほとんど気を遣わないので、よほどのトラブルが起こらない限りは「我関せず」。
いい感じに放っておいてくれるのだ。
実際、このマルカンビル大食堂は、赤ちゃん連れの家族客が多い。
他の施設であれば、赤ちゃんがギャン泣きするとお母さん方は周りにそれなりに気を使うだろうが、この大食堂ではそんなことを気にする必要がない。
赤ちゃんが泣いていても、誰も気にしない。
いい意味で放ったらかしである。
このいい感じに殺伐とした客あしらいが、マルカンビル大食堂が人を引き付ける理由なのだろう。
そうこうしていると、頼んだものが運ばれてきた。
まずは「ナポリカツ」である。
さっそく、ナポリタンから…。
うん、ナポリタン。
マルカン大食堂を知らない人が勘違いしないように、一応、書いておくが、マルカン大食堂は「味」で人気になっている場所ではない。
そのため、料理の味を期待してはいけない。
ここは、あくまでも、歴史と雰囲気とソフトクリームの大きさを楽しむ場所なのだ。
なので、このナポリタンも、「うん、ナポリタン」以上の感想はない。
「ナポリタンだな」
それだけである。
続いて、ナポリタンの上にのっているカツを…。
うん、トンカツだな。
以上。
そんな味である。
ナポリカツをペロッと平らげたら、
再び店員さんを呼んで、今度はソフトクリームの食券の半券をもぎってもらう。
しばらく待つと、名物のソフトクリームが運ばれてきた。
相変わらずボリューミーである。
余談だが、今から26年以上前、自分が高校生の頃はこのソフトクリームをさらにボリューミーにした「閉店前ソフト」という裏メニューがあった。
夕方の6時ごろ、食堂の閉店間際に入店してソフトクリームを頼むと、その日作ったソフトクリームを売り切ってしまうため、パフェを入れる大型の器にぎっしりソフトクリームを詰めて、その上に、ソフトクリームのコーンをさかさまに乗せた強烈なメニューが出てきた。
まさにアイスの暴力といった雰囲気のメニューだったが、高校生の頃は、部活帰りにこれを普通に食べていた。
このメニュー、今はもうないと思うが、今思い返してみても、あの量はなかなかすごかった。
そんな昔の裏メニューに思いをはせながら、目の前のソフトクリームを食べる。
マルカンのソフトクリームは箸で食べるのが作法である。
郷に入っては郷に従えで、自分も箸で食べる。
溶けるのを防ぐため、ソフトクリームの外側をこそげるようにしながら食べるので、必然的に、みんなこのような食べ方になる。
ちなみに、味の方は、ナポリカツと同様、「ソフトクリームだな」と思うだけの味である。
パクパクと食べ進めてきれいに完食。
ごちそうさまでした!!
機会があればまた来ます。
〇今回の会計
ソフトクリーム 260円
ナポリカツ 990円
合計:1250円
〇店舗情報
マルカンビル大食堂
岩手県花巻市上町6-2マルカンビル6F
駐車場:マルカンの駐車場を利用
TEL:0198-29-5588
マルカンビル大食堂のWEBサイト
マルカンビル大食堂のFACEBOK